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Mar 16, 2006

やっぱりクローネンバーグが好き!【ヒストリー・オブ・バイオレンス】

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あんまり話題になっていないが、デイヴィッド・クローネンバーグ最新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』が公開されている。

ここ数年、興行成績的にパッとしないクローネンバーグ。
「イグジステンス」であれ?と感じ「スパイダー少年は蜘蛛にキスをする」でなんじゃこりゃ!?と思わせてくれたが、本作では久々クローネンバーグ節を堪能させて頂いた。

私はクローネンバーグが大好きだ。
「戦慄の絆」('88)ですっかりはまり、それ以来ほとんど劇場劇場に足を運んでいる。しかし、本当はクローネンバーグの容姿が大好きなのだ(照笑)。
「ミディアン」('90)という、とてもトホホなホラー映画があるのだが、これに悪役として出演されている。そのお姿のかっこよかったこと…。スラリとした長身にクールな瞳、黒いコートを着て耽美なオーラをバンバン出しまくり、悪役だったのにむちゃくちゃカッコよかった。
「ミディアン」公開当時、LondonのTowerRecordsに、クローネンバーグの等身大看板があり、本気で盗めないかと思い詰めたほどだった(苦笑)

ま、それはさておき…。
ここ数年の作品があまり面白くなかったし、「ヒストリー」の前評判もほとんど耳に入らず、全くといっていいほど期待せずに見に行ったのだが…。こんなに私好みの作品だったとは。個人的には満足度80%、最近のクローネンバーグ映画にしちゃかなり高い。

作品の冒頭は実に退屈だった。のんびりしたアメリカの田舎町。そこに暮らす主人公トム。未だに奥さんとラブラブ。それはいいのだが、奥さんったら「10代の頃、あなたと知り合いたかった、今からその分取り返すわ」などといい、何を血迷ったかチアガールのコスプレで登場! とんだプレイを見せられ、この先一体どうなるか不安にさせられたがしかし、物語が進むにつれ、どんどんクローネンバーグ色が濃くなり、クライマックスは血で染まった。

物語は、アメリカのインディアナ州のとある田舎町。
ここで愛する妻と子供達と、平凡ながら仲むつまじくくらしていたトム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)。そんな彼の平和な暮らしがある日突然崩壊した。
トムが経営するダイナーに、ある晩二人組の凶悪な強盗が押し至った。
強盗の一瞬の隙をついたトムは拳銃を奪い、自ら負傷しながらも強盗を殺害し、店員や客を守った。
人々を救い、ヒーローとして歓迎されたトムは、一夜にしてメディアの注目を浴びてしまう。トム自身、自分がとった行動とその騒ぎに居心地の悪さを感じていたが、家族はそんなトムを誇りに思っていた。

再び穏やかな暮らしが…戻るまもなくトムの前に怪しい男(エド・ハリス)が現れ、トムのことを「ジョーイ、久しぶりだな。フィアデルフィアのことを忘れたわけじゃないだろう」と話しかけてきた。
トムは自分はジョーイではない、人違いだと否定するが男はなかなか引き下がらない。ジョーイというマフィアの男、今まで何人もの人を殺してきた男だという。
平凡なダイナーの主人トムの本当の顔は…。妻も次第に彼の過去を疑い始める。そしてトムとその家族に迫る新たな危機…。トムは家族を守るためにフィアデルフィアに旅立った。

作品として、この映画が良いかといわれると、少々疑問が残る。
原作を読んでいないので何とも言えないのだが、テーマは暗いし重いし、思わせぶりなエンディングに何かスッキリしないものが残ったことも確かである。
暴力を捨てた男が、愛する家族を守るために再び暴力を手にする…。

個人的な見解だが、クローネンバーグという人は、私たち人間の中に潜む「二面性」に重点を置いているような気がする。
「戦慄の絆」では、対照的な性格の双子が一人の女性を愛する、双子という設定はまるで一人の人間の多重人格を思わせるようなストーリーだった。
「Mバタフライ」ではジョン・ローンに「男」でありながら「女」を演じさせた。
「ザ・フライ」ではジェフ・ゴールドブラムに「人間」と「ハエ」を演じさせた。
「裸のランチ」ではバロウズという作家の中に「人間」と「非人間」なイキモノを共存させた。
「クラッシュ」では、普通の性癖と、一歩向こうの世界へ行ってしまった性癖を描いた。
そして「ヒストリー・オブ・バイオレンス」ではトムという平凡でおとなしい男の中に、殺しの達人という対極的な本能(?)を共存させた。

さらに、クローネンバーグの特徴といえばエログロさ。
「戦慄の絆」では怪しげな器具をつかってエッチするし、「クラッシュ」では狂気に満ちたカーセックス? 「ザ・フライ」においては人間にハエの精力植え付けちゃうし「Mバタフライ」においては…これ以上書けません(苦笑)絶対、クローネンバーグの性癖って普通じゃないでしょう、自分の趣向が作品に現れていると思うんだけど(笑)

クローネンバーグが好きという人は、彼の作品に対しエンターテイメント性を求めるのではなく、彼独特の「負」の世界観、言い換えれば人間の奥底に眠る生々しい本能を生々しく表現する、ところにビビっとくるのではないだろうか。
私は、そのクローネンバーグ・テイストが大好きなのだ。

今回気になったのが主演にヴィゴ・モーテンセンを起用したこと。
過去の作品を見て分かるように、美少年・美青年好き(ジュード・ロウ、ジェレミー・アイアンズ、ジェームズ・スペイダー、若い頃のクリストファー・ウォーケンなど)のクローネンバーグが、ヴィゴを使うとはかなり意外。ヴィゴってかっこいいが決して美形じゃない。もっと弱々しい美形の男に暴力性が宿る…的なキャスティングの方がもっとよかったんだけど(苦笑)

クローネンバーグ、やっぱりエログロ、バイオレンス&耽美路線でこれからも頑張って!
(って、ココまで書くと私の趣味が悪いのバレバレ…)

ミディアン
ミディアン

ヒストリー・オブ・バイオレンス
ヒストリー・オブ・バイオレンス

ヒストリー・オブ・バイオレンス
ヒストリー・オブ・バイオレンス

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Comments

>puffさん
クローネンバーグ好きってやっぱフツーじゃないですね、私も含め(笑)puffさんのおっしゃるとおり、居心地の悪さが良いんですよ。そういう監督なんですね。D.リンチなんかも「負」の世界観の人ですね。アチラの居心地の悪さは最上級ですが(笑)

>haryさん
懐の深い監督…かどうかわかりませんが、毎作品ごとすんごいもんを創りあげている監督さんです。もちろん、その全部に着いていけるわけじゃないんですけど(苦笑)

Posted by: Boh | Mar 24, 2006 at 11:51 AM

>puffさん
クローネンバーグ好きってやっぱフツーじゃないですね、私も含め(笑)puffさんのおっしゃるとおり、居心地の悪さが良いんですよ。そういう監督なんですね。D.リンチなんかも「負」の世界観の人ですね。アチラの居心地の悪さは最上級ですが(笑)

>haryさん
懐の深い監督…かどうかわかりませんが、毎作品ごとすんごいもんを創りあげている監督さんです。もちろん、その全部に着いていけるわけじゃないんですけど(苦笑)

Posted by: Boh | Mar 24, 2006 at 11:51 AM

ドモドモー♪
TB、コメントをありがとうございました。

Bohさんの記事からはクローネンバーグ監督への愛が感じられますね。
ワタシも同じく好きであります。
>彼独特の「負」の世界観、言い換えれば人間の奥底に眠る生々しい本能を生々しく表現
そうなんですよ!!普段、人が表に出さない(・・・出してはいけない?)ものを表に引っ張り出してくれるものだから、それがミョーに居心地悪さがあったり、また、それが良かったり、とてつもなく魅力的なのですよね。

Posted by: Puff | Mar 18, 2006 at 11:19 AM

いろんな作風でファンの満足度の高い作品を作り続けられるなんて、懐の深い監督さんですね~(^0^)

Posted by: hary | Mar 18, 2006 at 10:31 AM

>マダムSさん
コメント有り難うございます。
「アイデンティティ」うーむ、そうかもしれません。
ジョーイは3年かけてトムになりました。
あれは自己否定であり、Rebornなわけです。一個人のアイデンティティというよりは、「暴力」という本能にしみついてしまったものは、宗簡単には拭えない…ということではないでしょうか。どっちにしろ奥の深い映画ですよね(苦笑)

>yanksさん
コメント有り難うございます。
ものすごいところに注目されていますね。
今までのクローネンバーグだと、ウィリアム・ハートが死ぬシーン、あそこで死体の横を虫がカサカサと音を立てながら横切っていく…なんてシーンがあってもおかしくないかしら、などとクローネンバーグ馬鹿っぷりを披露してしまいました(爆)

>隣の評論家さん
おぉぉ!「ミディアン」をご覧になっているんですね。
あんなマイナーな映画をよくご存じで。大変うれしゅうございます(笑)

>M.さん
>>目に見えるもの見えないもの含めた異形ものへのこだわり
まさにおっしゃるとおりです!クローネンバーグといえば「異形」ですね。その最たる作品が「裸のランチ」だったのではないでしょうか。
かれこれ15年ぐらい前になるでしょうか…。東京・渋谷の某デパート会場にてクローネンバーグ作品に使われた小道具やセットの展示会が行われていました。そこに展示されていた数々の「異形」モノ、ホントにすごかったです。一番印象的だったのが「戦慄の絆」で使用された医療器具。不気味なカタチなんですけど、ある種の美しさがあったのを今でもはっきりと思い出されます。

>charlotteさん
コメント有り難うございました。
>>冒頭とラストにはかなりうなりましたよ〜
私はラスト、ホントに「うっ!」と唸ってしまいました(苦笑)

>nichikaさん
コメント有り難うございました。
ウィリアム・ハートがクローネンバーグ作品に出るなんて、ちょっと意外な感じがありましたが、すごくよかったです。しかし、あの作品でオスカーにノミネートされてしまうとは…。正直クローネンバーグがオスカーに絡むなんて思ってもいなかったのでびっくりしました(苦笑)

>ノラネコさん
コメント有り難うございます。
>>ビゴはイメージに合いませんでしたか?
すいません(苦笑)私はどうも、クローネンバーグ作品に「耽美さ」を求めてしまうので、そういう意味でヴィゴに違和感を感じたのかも知れません。でも、いいお父さんぶりでしたね。

>Renさん
暖かいお言葉ありがとうございます。
「偏った好み」が私だけじゃない、そう思えるだけで心強いです(爆)

Posted by: Boh | Mar 17, 2006 at 03:22 PM

こんにちは、TBありがとうございました。
クローネンバーグというとわたしも二面性と、本当に目に見えるもの見えないもの含めた異形のものへのこだわりや愛の形みたいなものを感じます。そういった意味では前作「スパイダー〜」なんかは以前の彼の作品同様ツボでした。本作は劇場鑑賞時にはヴィゴしかみていなかったのと「ワイルドキャッツ」に目が点だったので(笑)、またあとでその辺気にしてみてみたいと思います。

Posted by: M. | Mar 17, 2006 at 12:02 PM

ご訪問ありがとうございました。

注目した点は、兄貴の頭に銃を発射したときの血の流れ方です。貫通した先のほうからブワッと流れ出ていたシーンに監督らしいドスの利いたリアリズムを感じたのでした。

奇遇にも僕も「差別と部落」という本を読んでいます。

Posted by: yanks | Mar 16, 2006 at 10:39 PM

TB&コメント有難う御座いました♪
確かにクローネンバーグご本人 なかなか整ったお顔立ちなさってますよね~俳優でもOKですね^^
二面性ですね なるほど!
この作品でも途中で奥さんに「多重人格なの?」って言われてましたよね?なのでそこで私はそういう映画なのかと一瞬思いました「“アイデンティティー”」みたいな・・
Bohさんはどう思われましたか?

Posted by: マダムS | Mar 16, 2006 at 10:09 PM

TBありがとうございました。
監督の独特の「負」の世界観、結構好きです。ヴィゴもどちらかというとクセのある役が多かったですよね。
冒頭とラストにはかなりうなりましたよ~

Posted by: charlotte | Mar 16, 2006 at 09:06 PM

Bohさん、こんにちわ。
TB&コメントありがとうございました。
>本当はクローネンバーグの容姿が大好きなのだ(照笑)。
おお!そうですか。私も、知的な紳士という風貌でなかなか素敵な気がします。
「ミディアン」出てましたねぇ!懐かしいな。かなりピッタリの役だったと記憶しているのですが...。

Posted by: 隣の評論家 | Mar 16, 2006 at 06:45 PM

TB&コメントありがとうございます!
確かに殺しのシーンは凄かったですねー。去年の9月にL.A.で見たので、台詞のニュアンスを確かめに日本でも見に行こうとは思ってるんですが・・・。個人的にウィリアム・ハート氏のシーンが好きでした。
よかったらまた遊びに来てくださいね♪

Posted by: nichika | Mar 16, 2006 at 05:28 PM

TBどうもです。
ビゴはイメージに合いませんでしたか?
私はクローネンバーグの主役達の中ではクリストファー・ウォーケンやジェームス・ウッズの系列で結構イメージ通りでした。
全体的に初期作品の雰囲気を強く感じましたね。
ずっと洗練されてはいますが。

Posted by: ノラネコ | Mar 16, 2006 at 12:55 PM

TBありがとうございました。
特に主演のヴィゴファンというわけではないので
>もっと弱々しい美形の男に暴力性が宿る…的な・・・に
賛成です!私の好みもかなり偏ってます(笑)
ブツ切れとも思える印象的なラストでした。

Posted by: Ren | Mar 16, 2006 at 07:31 AM

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