アニー・リーボヴィッツ、私の憧れの女性です。
もともとポートレートに興味があり、ブルース・ウェーバーやロバート・メイプルソープ、ピエール&ジルが大好きで90年代はエキシビジョンなどよく見に行っていました。
1995年、新宿の三越美術館で開催された「アニー・リーボヴィッツ写真展」はとても印象深いエキシビジョンでした。あれだけの作品を一度に堪能できたのは最初で最後。もう東京で、大規模な写真展はなかなか開催できないのでしょうか…残念でなりません。
最近は、ルイ・ヴィトンの広告写真。
「旅」というテーマでゴルバチョフ元書記長、カトリーヌ・ドヌーヴ、テニスプレーヤーのアガシの写真が本当にステキでした。アニー独特の色の配色、写真の構造がとても好きです。理屈ではなく、私のフィーリングに合う、とでもいいましょうか…。
大好きなアニー・リーボヴィッツのドキュメンタリーフィルムが日本で公開されるのを知ったのが去年の秋。それ以来、この映画の公開をどれだけ待ち望んだことか…。写真という作品だけではなく、アニーの「ナマの声」「生き様」「仕事をする姿」を見ることができるなんて、嬉しいという言葉では言い表せないくらいコーフンしました。

「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」
監督・制作はアニーの実妹バーバラ・リーボヴィッツ。
彼女自身もドキュメンタリーフィルムの制作者として、数多くの賞を受賞しています。
実の妹が姉、アニーをどう捕らえるのか…。
妹だからこそ見せる、アニーの素顔をたくさん垣間見ることの出来る貴重な映画です。
創刊まもない「Rolling Stone誌」のカバー写真を撮ったり、ロックスターの密着取材でツアーに参加したり、60、70年代のロックが一番パワフルでキケンな時代をサバイブしたアニー・リーボヴィッツ。
ストーンズのツアーに参加し、ドラッグ中毒になり、更正して社会復帰したという話はあまりにも有名。それだけミュージシャンたちに密着することで、アニーの存在はその場の空気となり、シャッターを切る音すら、彼らにとって「空気」のような存在になってしまう。だからこそ、ミュージシャンたちの自然な姿を撮ることができるのです。
この映画では、アニーの被写体となったセレブが数多く出演しています。
ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ヒラリー・クリントン、アーノルド・シュワルツネッガー、オノ・ヨーコ、パティ・スミス、ベット・ミドラー、ミハエル・バジリニコフ……。
彼らは一様にアニーのすばらしさを、アニーでなければ撮れない、その作品の被写体になったことが名誉であり、誇りであると語っています。

そんなアニーが有名になったのは、なんといってもジョン・レノンの最後の写真。
ジョンの2枚目のベストアルバムのジャケット写真として撮影されたのは、ジョンが暗殺された日の朝。つまり1980年12月8日。その数時間後にジョン・レノンは自宅前で射殺されました。
裸のジョンが、服を着たヨーコにまるで母親にすがるようにしがみついている写真です。

オノ・ヨーコは、この撮影についてこう語っていました。
「アニーだからこそ、ジョンはここまで素顔をさらけだした」と…。

また、このフィルムではアニーのプライベートについても描かれています。
彼女のパートナーであり、「アメリカの知性」と呼ばれたスーザン・ソンタグ。
写真、美術、映画、文学、政治と幅広い評論活動をしたソンタグは、アニーにとってパートナーであり師匠でもあったそうです。
それまで、仕事として有名人(セレブ)ばかりを被写体としていたアニーは、原点に返りたいと思っていたそうです。
1993年、ソンタグと戦火のサラエボに行ったアニーは原点に戻り、小さなカメラを片手に、そこで起きている現実、悲劇をカメラにおさめました。このことは彼女の創作活動においてターニングポイントになったと、インタビューで答えています。
今もなお写真家として頂点を極めるアニー・リーボヴィッツの素顔を見ることができる貴重なドキュメンタリーフィルムです。
ぜひ、アニー・リーボヴィッツに興味がある方、もしくはアニーが撮った作品に興味がある方は、劇場に足を運んでみてください。
■アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生(原題:ANNIE LEIBOVITZ: LIFE THROUGH A LENS)
■2007年 アメリカ 83分
■監督・制作:バーバラ・リーボヴィッツ
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